投稿日 2023.11.09

地域 社会 文化

暮らしに必要不可欠な“ライフライン”を目指す新メディア「西日本新聞me」


西日本新聞は2021年2月、ニュースサイト「西日本新聞me」をスタートさせた。社会のデジタル化に伴い変化する情報発信の在り方を模索して立ち上げた、新たなデジタル媒体だ。地域に情報を届ける新聞というメディアの中でmeが果たしている役割や今後期待される展開とは何か。西日本新聞meの相本康一編集長に聞いた。

福岡のミカタ”掲げ、福岡・九州の地域ニュースを細やかに

「生活で必要とされる情報を細やかに配信します」と相本康一編集長
「生活で必要とされる情報を細やかに配信します」と相本康一編集長

「西日本新聞me」を一言で表現するとすれば。

西日本新聞meは「福岡のライフライン」を目指しています。
報道機関はジャーナリズムという役割を果たしながら地域に貢献することが使命です。電気、ガス、水道、交通といったライフラインと同じように「生活を維持するために欠かせない、ここぞというときに頼りになる存在」に私たちの存在がたどり着ければと考えています。

“福岡のミカタ”というキャッチフレーズですね。

はい。西日本新聞の拠点である福岡県のさまざまなニュースや情報と、福岡県以外だとしても福岡で暮らしている人が関心を持つニュースを届けるという路線です。”福岡のミカタ”と言っていますが、福岡県限定というわけではありません。西日本新聞は九州内に総支局を置き取材網を持っていますから、それらの取材拠点を生かした「九州の情報」を届けています。

me独自といえる編集ルールがあれば。

新聞紙面は朝刊と夕刊、1日2回発行ですが、meは1日3回、上記のような速報も含めてトップページの記事構成をがらりと変えています。福岡のニュース、話題、出来事を優先しています。
見出しに地名をしっかり明記する工夫もしています。デジタルの場合、見出しによって読んでもらえるかどうかが随分変わり、地名が入っているとページビュー(PV、ページへのアクセス数)が伸びることが分かってきています。おそらく、自分の地域で起きていることに関心を持っている読者が多いのだろうと思います。「福岡」「〇〇市」「〇〇町」などを入れると反応が違いますね。

me独自の双方向展開を見せる「あな特」、コンテンツに携わる記者は約300人

「紙面ではできなかったアプローチが話題を呼んでいます」
「紙面ではできなかったアプローチが話題を呼んでいます」

力を入れているオリジナルコンテンツは何ですか。

たくさんあり過ぎて(笑)。一つ挙げるとすれば「セレクト」というコーナー。「深く知る~福岡で起きた注目の事件」では、警察の捜査、裁判内容についてどこよりも詳しく届けています。
例えば母親が5歳のわが子を餓死させたとして罪に問われた事件。「母親は法廷で何を語ったのか」は、被告が弁護士、検察官らの質問にどう答えたのか、法廷でのやりとりを詳しく報じました。これは新聞紙面には掲載していないコンテンツです。

反響が大きかった、あるいはPVが上がったコンテンツは。

連載記事をまとめた「部落問題を考える」というコーナーは、九州以外でも読まれています。部落差別の問題を真正面から取り上げる新聞社が全国に少ないからでしょう。
このほか「電力カルテル」「福岡市地下鉄七隈線延伸」「五月病対策」など、さまざまなテーマについて地域の経済人や専門家のコメントをお伝えする「me公式コメンテーター 福岡のプロが解説」も好評です。

“あな特”も目玉コンテンツですね。

「あなたの特命取材班(あな特)」ですね。読者から届いた疑問や困りごと、内部告発を記者が取材して社会の課題解決を目指すという双方向型の調査報道です。
2018年に始まった企画ですが、meでは新たに調査依頼というコーナーを設けました。「こんな疑問・困り事が寄せられています」と掲出します。まず記者が取材し、得られた情報や答えを公開する。するとそれについて地場有力企業が「補足したい」などと連絡をくれたりするので、それも公開します。それに読者からも反響があり、その結果、記事になる…といった具合です。
記事になる前のプロセスで、読者あるいは企業や自治体と双方向のやりとりをする場、紙にはないme独自のフィールドが出来上がりました。ある種の社会参加の機会であり、紙ではなし得なかった試みと言えます。

編集体制は。何人ぐらいで制作していますか。

編集局のクロスメディア報道部という部署が編集・制作を担当しています。取材網という意味では、部の枠を超えて西日本新聞の編集局、総支局を含めて計300人弱の記者が携わっているんですよ。

聞き取りを数多く実施。読者と地域の経済や文化をつなぐ新しい報道を追求

「地域経済や選挙情報などのニーズが高い。読者の声を参考に軌道修正しています」
「地域経済や選挙情報などのニーズが高い。読者の声を参考に軌道修正しています」

読者の反応や声について。

長年地域に育てていただいた「西日本新聞」というブランドは、一定の信頼をいただけていると自負しています。「やっぱり新聞は噓を書かないよね」と言ってもらえます。meそのものに対しては「やっぱり地域のニュース・情報に詳しい」「深掘りされていて、よそには載っていない」といった評価をもらえています。
データを見ると、地域経済や事件事故のニュース、選挙情報などへのニーズが高いですね。誰に投票しようかなというときの参考にもしてくださっています。

読者の声はどのように集約していますか。

データをチェックするだけではなく、アンケートを取ったりインタビューをしたりしています。回数を思い出せないくらい、これまでたくさん聞き取りをしました。生の声を聞かなければならないし、その声を参考に軌道修正をしていくべきだと考えています。

今後の展望を。

やはり目指すのは「福岡のライフライン」。そのために何が必要とされているのか、データを見ながら試行錯誤しています。有料会員も増え、目的意識を持って地域の情報を深く知りたいと思っている読者、いわばファンも着実に増えているので、さらに広げていきたいですね。
西日本新聞はこれまで経済や文化など、さまざまな地域情報と読者を結ぶハブの役割を果たしてきました。ただし、紙では届かない領域が社会に増えているのも確かで、せっかく取材した記事が届かなければ、地域貢献、地域のための報道は力を失ってしまいます。meでは、そんな地域貢献という意味でも新たな報道スタイルに挑戦していきたいという思いです。